山本伸一は、ただ“すべてに勝って、戸田先生にお喜びいただくのだ”との一念で、働き、戦い、走り抜いた。
 伸一の心には、瞬時も離れず戸田がいた。彼の日々は、瞬間、瞬間、師匠である 戸田との対話であった。彼は確信していた。
 “自分の一挙手一投足を、心の奥底を、常に先生はご覧になっておられる!”
 そして、“いかなる瞬間をとっても、常に胸を張って、先生にご報告できる自分であらねばならない”と心に決めていた。
 毎朝、唱題しながら、伸一は誓った。
 “先生!今日もまた、全力で戦い抜きます。先生のために、必ず勝利いたします。まことの弟子の実践をどうぞご覧ください”
 だが、伸一を襲う風は、激しく、冷たかった。しかも、伸一は胸を病んでいた。発熱も続いていた。厚い困難の壁に阻まれ、呻吟する夜もあった。
 そんな時は、戸田の叱咤が胸に響いた。
 “今が勝負だ!負けるな!自信をもって、堂々と突き進め!戸田の弟子ではないか!師子の子ではないか!”
 戸田を思うと、勇気が出た。力がわいた。
 自分らしく戦い抜いた日には、伸一の胸には会心の笑みを浮かべる戸田がいた。
 “よくやった、よくやったぞ!”
 伸一にとって怠惰や妥協は、自身の敗北であるばかりでなく、師匠を悲しませることであり、裏切りでもあった。
 師弟とは、形式ではない。常に心に師があってこそ、本当の師弟である。心に師がいてこそ、人間としての「自律」があり、また、真の「自立」があるのだ。


『新・人間革命』新世紀の章


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 常に心に師があってこそ、本当の師弟。
 今は、起きている間は常に勉強することが、常に先生と共に戦うこと。