中国の鄧穎超(とうえいちょう)さんに、周恩来総理とのなれそめを伺ったことがある。
 「私たちには、いわゆる仲人はいません。しいて言えば、『五・四運動』(1999年5月4日、日本をはじめ諸外国の圧迫に、青年たちが立ち上がった民衆運動)が仲人です」
 海棠やライラックの花々の香る、北京のご自宅での語らいであった。
 お二人は、結婚する青年たちに、よく、夫婦としての「八つの原則」を語られたという。
 その八項目とは、何か?
 それは、「互いに愛し合う」「互いに尊敬し合う」「互いに励まし合う」「互いにいたわり会う」「互いに譲り合う」「互いに許し合う」「互いに助け合う」、そして「互いに学び合う」――と。
 ともあれ、結婚は、それ自体が目的ではない。
 大事なことは、あくまでも、一人の人間としての尊厳であろう。
 人は、誰も皆、生まれてくる時も一人、死んでいく時も一人である。
 結婚するかどうか等で、幸福は決まらない。
 幸福を決めるのは、生き甲斐があるかどうか、充実があるかどうかである。
 周囲に「希望」がなければ、自分で創ればよい。
 心というものは、名画家のように、いくらでも自由自在に「希望」を描き出していけるからだ。
 真の愛情とは、歳月を経るほどに、深まりゆくものである。
 周総理ご夫妻も、半世紀以上にわたって、戦友として、生死を共に超えながら、愛情をより深めてこられた。それは、その愛情が同志のため、友人のため、人民のため、そして後継の青年たちのためにと、広がっていったからだと、鄧穎超さんは振り返っておられた。
 私たち夫婦の実際の仲人は、師・戸田城聖先生である。
 その恩師からの結婚のはなむけも、ありきたりのお祝いではなく、「二人で力を合わせて戦い、人々に尽くしていきなさい」という一点であった。


『新・女性抄』