広宣流布は俺がやる!

      創価学会青年部 牙の大河

学生

8月27日 『女性に贈ることば365日』

 人知れぬところで、ひたすら自身を磨き、学びに徹した人こそ、必ずや勝利の人生を開き、たしかな歴史を残していくものだ。


『女性に贈ることば365日』8月27日


*******


 戦いは、地味な、自分との戦いが、その99%を占める。それが現実。

 
「一人立てるときに強き者は真正の勇者なり」シラー

福運ある人に

有名な人よりも力ある人に、
力ある人よりも福運ある人になってもらいたい。


1975.2.28
創大女子学生部第1回卒業の集い(創春会結成)

創価大学の第一回卒業式

 思えば、随分、忍耐した。
 しかし、晴れ渡る胸は、辛かったことなど、みな忘れ去ってしまった。
 勉学と苦痛と戦った四年間の日々——。
 目を閉じると、まぶたに浮かぶ、あの友も、この友も、皆、一生涯の同志であり、盟友である。
 僕の血管には、彼らの生命が脈々と流れ、終生、鼓動していくにちがいない。
 彼と語った人生。
 彼と喜び、抱き合った、勝利の瞬間。
 彼の決意と信念には、鉱脈のように奥深く、哲学があった。

 私は勝利者だ!
 私は幸福者だ!
 それは、英知の宮殿で励まし合った親友がいるからだ。
 勝っても負けても、肩を叩き合った。偉大な知性の大学で、何ものにも動じないで、未来を見つめた。
 私たちの眼前の現象は、揺れ動いた。しかし、その波風を受けて、幼い少年時代とは大いに異なる、高次元の世界観を身につけることができた。
 私たちは、一つの人生の闘争に勝った。
 そして今、栄光への権利と力を蓄え、一生涯の戦闘に勝ちゆく夢を見ている。
 そこには、無限の励ましの音楽が響いている。

 ◇

 天も晴れ、地も晴れたる一九七五年(昭和五十年)の、三月の二十二日—。
 その日は、私の創立した創価大学の、尽きることなき思い出の第一回卒業式であった。

 一期生の入学式の時は、私は出席してあげられなかった。
 新入生の諸君と、わずかな教職員、そして御父母の方々が入っても、会場の中央体育館はガランとしていた。
 一九七一年(昭和四十六年)の四月、当初の予定を二年早めての開学であった。
 国内には大学紛争、世界でもスチューデント・パワーの嵐が吹き荒れた直後であった。
 行き詰まった教育界に希望の暁鐘を打ち鳴らすためにも、一日も早く、創価大学をスタートさせることを決断したのである。このため、創価高校の第一回卒業生も、開学に間に合うことになった。
 なんと不思議な宿縁と使命の友か!
 伝統ある有名大学にも行けた多くの英才が、決然と、無名の創価の学府に集ってきてくれたのである。
 彼らは、「若き創立者たれ」との私の期待に応え、進んで先駆の苦闘を引き受けてくれた。
 懐かしき創大祭も、滝山祭も、クラブ活動も、全部、ゼロからの出発であった。

 ◇

 おお、我らの大学よ!
 北海道、四国、九州、そして、沖縄等の遠くからも、わが愛する母校に集まった友が多くいた。
 ある時は思索し、ある時は沈黙を裂いて叫び、またある時は、夜を駆け抜いた、深き使命のある寮生たちを、あの健気な、雄々しき寮生たちを、私は忘れることはできない。
 また私には、故郷から遠く離れて、住み慣れぬこの地で、泣きながら、自己の成長と人生の財宝を勝ち取っていった、世界の留学生の凛々しき姿も、忘れることはできない。
 夏の朝、彼らと握手しながら語り合った、あの清らかな瞳。私は、彼らの生活が平安であるよう祈る毎日であった。
 来れよ、求道の友よ!
 来れよ、向学の友よ!
 私は、「創立」という太陽に輝き、世界の青春の友と歩む自分を、皆に捧げたい。

 ◇

 君たちは、悪を爆撃し、善なる平和の草原を疾駆して、素敵な心に王冠を抱く、人生の博士になるために、学ぶのだ。
 君たちには、多くの試行錯誤があり、創造の苦悩と喜びがあったことだろう。
 創大の正面玄関前のブロンズ像を見つめつつ、そこに刻まれた「英知を磨くは何のため 君よ それを忘るるな」「労苦と使命の中にのみ
人生の価値(たから)は生まれる」との言葉を、自問自答した日々もあったにちがいない。
 君は、日々、決意した。
 ——私は、自身のありとあらゆる才能を、この地で発揮してみせる。
 金の星のごとく、自分の宝を光らせながら、銀の汗を流しながら、万書を読む、と。
 君は自分のために、人間としての勝利の証のために、生き抜く希望のために、朝な夕な、信仰もした。信仰は、心を強く、楽しくさせ、人を導き、生きる歓びを与えるからだ。

 ◇

 創価大学は、牧口先生、戸田先生が悲願とされた「人間教育の最高学府」である。
 人間をつくるのは「人間」である。真剣な生命と生命の触発なくして、真の教育はない。

 私は見た。
 歴史もいまだ浅い、創価大学の到達しゆく未来の使命を。
 私は見た。
 打算と世間体に流され、真実の人間の陶冶を忘れた学校もあるようだ、と。
 それは、真の学問ではなく、真の人間学でなく、うわべの世間学である。
 我らは価値を求める。
 人生の価値、生き抜く価値を。勝利の価値、そして、幸福の価値を。
 その本質的な探求心がみなぎる、真正の最高学府であってもらいたい。

 教訓的な声はいらない。
 私たちは、青春の限りない学問の追究が、人生を永遠にし、平和を永遠にできることを知っているからだ。
 私たちは、学究的な姿勢のなかに、砂漠を緑地に変えゆく、非常に高邁な、貴重な輝きがあることを知っている。
 英知の世界のみが、未来の世界を豊穣とさせていくにちがいない。ゆえに、弛みなき研鑽を必要とする。
 そこに希望に生き抜く、幸福の群衆の大輪が、華々しく咲いていくにちがいないからだ。
 この若き学徒の青春の瞳は輝き、花は爛漫と咲き薫る。
 この美しき二十歳の生命は、太陽に輝き、月に輝き、知性に輝く。
 その額には、大いなる学究の輝きが美しい。

 ◇

 開学から三年目の秋の、創大祭の折りであった。
 大学として、報道関係者や企業のトップクラスの方々、約七百名を御招待した。
 これまでのご支援の御礼と、着実なる教育成果を、その目で確かめていただこうという趣旨であった。
 記念の祝賀会で、私は、来校されたお一人お一人に名刺を渡しながら、ご挨拶した。
 「創立者の池田です。学生が就職活動で伺った折りには、どうか、よろしくお願いします。」
 体調は芳しくなかったが、それでも二時間近く、広い中央体育館のフロアを汗びっしょりになって歩き回った。
 尊き一期生たちは、後輩たちのために、現実社会の就職を、断じて勝ち取ってみせると敢闘した。
 厳しき社会と、厳しき就職。
 そのなかで、先輩は、尊き涙と決心の汗と真剣な力で奔走し、黄金の大道を広々と開いてくれた。
 第一期生が、全員、見事に、百パーセントの就職を勝ち取ったと聞いた時は、本当に嬉しかった。感動した。

 今や、多くの先輩たちは、世界のありとあらゆる重要な職場で活躍している。
 人生の目的のために、人生の勝利のために、彼らは奮闘する。そして、自らが旗を掲げた戦場で、全部、勝ってみせるという、怒濤の勢いが常にある。
 心のなかに燃える、創価の魂の炎は消えない。それは永遠である。
 いずこにあっても、誇りをもって戦う、先輩の誠実な姿。
 真実に、正々堂々と進みゆく、喜ばしき、あの深い姿。
 その勝ちゆく波浪の力は、未来の、何万、何十万の後輩のために、決して消えることはないだろう。

 ◇

 第一回の卒業式の式典が終わると、私は、体育館のフロアに降りて、最前列の学生たちと固く、固く手を握り合った。
 六百十三人の卒業生全員と握手する思いで・・・・・・。

 僕は覚えている。
 あの学生も、この学生も。
 二十一世紀の大空に開いた、大きな目で、私は、皆を見ている。
 炎に燃える目を開くと、永遠に続きゆく、永遠に歌いゆく、永遠に舞いゆく、壮大な朝(あした)の光彩と大気が、今日も、彼らを大きく包んでいる。
 混乱しきったこの世で、この道で、彼らの瞳は、正確に歩みゆく軌道を決して外れない。
 垢にまみれた心、荒廃の社会にあって、豪華な信念の彼らは、偽善者どもを叩き、正している。
 彼らの人生は、快楽よりも、崇高な感謝に光っている。

 ◇

 「学校は、学生で決まる」とは、わが師・戸田先生の不滅の言であった。
 学生、特に卒業生の活躍がどうか。一般の社会の評価も、それが勝負である。
 第一回の卒業式から、今年で満二十五年となった。
 本年の卒業生を加え、雄飛の友は、通信教育部も含めて四万人に近い。さらに、創価女子短期大学の卒業生を加えれば、実に四万五千人となる。

 ◇

 わが校の主導権は、使命と誇りをもちたる学生にあり!
 彼らは、多極化の方向のなかにあって、名実共に、学術と文化の理想的な要塞を築いてくれている。
 そして、人生の勝利と社会の繁栄を構築せんと、わが生命の城をば、勉学の砦をもって、営々と築いている。

 批判がなんだ!
 それは、我らの正義の実在を妬んでいる証明だ。
 嫉妬がなんだ!
 それは、我らの雄々しき人格に対する羨望の下劣な炎だ。
 迫害がなんだ!
 歴史上、正義と真理のために戦う人は、必ず、その尊厳を証明するための嵐がつきものだ。
 何も恐れない!
 それは、我らの名誉であり、光耀(こうよう)であり、勝者の証なのである。
 低劣にして、売名の非難など歯牙にもかけない。
 それらは、壮大なる勝利の歓声と凱歌に包まれゆく、我らの大道の片隅に生えた、雑草に過ぎない。
 卑劣な誹謗など、智恵の賢者は、信念の長者は、軽蔑して見向きもせず、悠然と前に進む。
 我らの行進は常に、学問と哲学の、栄光と勝利の城に向かって、厳然と進んでいるのだ。

 古今東西を通して、迫害されずして、偉人になった人物は、歴史上、一人もいない。
 中傷批判を受けずして、大成功者になった人物はいない。
 嫉妬の炎と憎悪の炎に侵されなかった、大成功者もいなかったにちがいない。
 正義は、迫害に遭ってこそ、正義である。迫害のなきは、正義の戦いをしていなかった証拠である。
 成功者は、苦難の嵐に遭ってこそ、真の崩れざる成功者である。疾風と怒濤を乗り越えてこそ、名誉ある勝者の顔(かんばせ)は明るい。

 君たちよ!
 偉大なる人間になるために、深く強き勝利者になるために、中傷の寒風に向かって、険しき山を、一つまた一つと、胸をはり、勝ち越え給え!
 その彼方には、永遠に広がる、人間の勝利の歴史の宮殿が待っている。
 それは、三世に崩れざる黄金不滅の魂の殿堂である。

 ◇

 近世、世界の動向は、常に学生が指揮をとってきた。
 邪悪な権力に対し、戦争の軍事力に対し、陰謀と欺瞞の強権に対し、不正と狡猾な学者に対し、常に勇気ある民衆の先頭に立って、戦ってきたのは、学生であった。
 勇敢なるスクラムを組み、革新の道を開き、新世紀の夜明けを迎えむと、暗き闇の時代を打破しゆく、社会革命の先陣を切ったのも、学生であった。常に、学徒であった。
 正しき力と真実の善の求心力と、スクラムの君たちの前進に、私は人間の魂の宝冠よ、いざや輝きゆけと叫びたい。

 創価の学徒よ、断じて、人生と社会の勝利者たれ!
 そして、妙なる生命の音楽を奏でつつ、万人が待っている、無限の文化の世界を築け!
 君たちよ、堂々たる不敗の生命と希望の王者たれ!
 吹きすさぶ狂気の風の中で、君の魂は、常に大勝利の大空に翔び上がりゆけ!

 「学ばずは卑し」という古人の言葉を、私は今もって、座右の銘としている。
 私は、来る日も来る日も、君たちの英知輝く無限の暁の光を見つめている。


2000.3.20
随筆 新・人間革命136
創価大学の第一回卒業式

“いてもらいたい人”

 山本伸一は、来賓と精力的に言葉を交わし、名刺交換していった。
 伸一の汗は、スーツの襟にまで滲んでいた。
 彼の後ろには、「創大祭」の実行委員長である押山和人という学生がついて歩いていた。
 押山も一期生で、来春には四年になる。だが、卒業後の進路について、まだ、真剣に考えてはいなかった。
 就職活動をするにしても、先輩もいないために、よく状況がつかめず、まだ先のことのように感じていたのである。
 しかし、創立者の姿を見て、押山は目の覚める思いがした。
 “先生は、本気になって、ぼくたちの将来に心を砕き、就職の問題も学生自身よりも真剣に考えて、手を打ってくださっているんだ。
 よく、『諸君のために道を開く』と、先生は言われるが、今、まさに、体を張って道を開いてくださっている!”
 押山は、創立者の姿を生命に焼き付ける思いで見ていた。彼の胸には熱いものが込み上げ、太い眉の下の大きな目が、何度も曇った。
 この日、伸一は、体育館に集った、ほとんどの来賓とあいさつを交わしたのであった。
 さらに、このあと、彼は「創大祭」を記念して行われた、卓球大会やテニス大会にも、相次いで出場した。
 伸一は、疲れ果てていた。しかし、そんな素振りは全く見せずに、学生と対戦した。
 夕方からは、教授の有志の招待を受け、構内の合掌造りの「万葉の家」で、食事をともにしたのである。
 最初に、教授の代表があいさつに立った。
 この教授は、感無量の面持ちで語った。
 「私は、本日、創立者の姿を拝見し、心の底から感動いたしました。山本先生は、全来賓と会われ、時に、深く、深く頭を下げておられた。学生の未来を開くために、すべてを捧げるご決意が、痛いほど伝わってまいりました。私は反省しました。その慈愛が自分にはあったのか、と。先生は、身をもって教師の精神を教え、創価大学の建学の精神を体現してくださった……」
 真の共感は、行動のなかに生まれる。
 第三回「創大祭」の祝賀会で、創大生の進路を開くために、身を粉にして各企業の代表者と対話する山本伸一の姿を目の当たりにして、学生たちは、就職という壁に体当たりする決意を固めていった。
 年が明け、四期生を迎えた一九七四年(昭和四十九年)の五月一日、会社訪問が解禁になると、一期生たちは、一斉に就職活動に動き出した。
 創価大学の職員たちは、一期生が二年生になった年の秋から、公務員試験の資料を収集したり、教員などから縁のある会社を紹介してもらい、あいさつ回りを重ねてきた。
 だが、当初、求人はなかなか集まらなかった。しかし、山本伸一の奮闘が次第に実を結び、新設の大学としては、かなり多くの企業が門戸を開いていったのである。
 ところが、七三年(同四十八年)の暮れから景気は悪化し、しかも、大卒予定者は史上最高といわれていた。就職戦線も激戦となっていったのである。
 会社訪問が解禁されてほどなく、創価大学を訪れた伸一が、校舎のロビーを歩いていると、三十人ほどの学生が、就職の求人票を張った掲示板の前に集まっていた。
 彼は話しかけた。
 「どう、いい会社はあったかい?」
 振り返った学生は、声をかけたのが伸一だと知って、やや緊張した顔で答えた。
 「それが、思い通りの会社がないんです」
 伸一は、笑顔を向けながら言った。
 「すべて希望通りの会社なんて、ないのが普通だよ。
 むしろ、自分のあげた条件のなかで、一つでも二つでもかなえば、よかったと考えるべきだ。仕事は趣味とは違う。
 月給をもらうんだから、大変なことや苦しいことがあるのは当然です。どんな会社でもいい。そこで、頑張り抜くことが大事だよ」
 「はあ……」
 学生たちは、少し納得がいかないような声で返事をした。皆、いわゆる一流企業でなければならないと考えていたのだ。
 「君たちは、有名な大企業なら、安定していると思っていないかい」
 皆が頷いた。
 青年に必要な素養は、外形にとらわれず、内実を見極める眼である。
 山本伸一は、学生たちの就職に対する考え方を正しておかなければならないと思った。
 「世の中に安定している会社なんて、一つもありません。社会が激動しているんだから。
 日々激戦に勝ち抜くために、どの会社も必死です。発展している会社は常に商品開発や機構改革などを行い、真剣に企業努力をしています。
 たとえば、食品会社にしても、医薬品の分野に進出したり、生き残りをかけて、懸命に工夫、研究し、活路を開いているんです。どの業界も、食うか、食われるかの戦いです。
 昨日まで、順調であっても、今日、どうなるかわからないのが、現実なんです。
 大会社に入っても、別会社への出向もあれば、人員整理もある。また、倒産することだってあるでしょう。
 だから、“この会社に入れば安心だ。将来の生活が保障された”などと考えるのは間違いです」
 学生たちは、真剣な顔になっていた。
 “挑戦”を忘れ、“依存”の心をもった人が何人いようが、発展の力とはならない。
 伸一は言葉をついだ。
 「就職する限りは、どんな仕事でもやろうと、腹を決めることです。
 たとえば、出版社というと、多くの人は編集をイメージするが、会社には経理もあれば、営業もある。また、受付もあれば、清掃や営繕を担当する部門もある。
 有名出版社に入ったとしても、どこに配属されるかはわかりません。また、自分の好きな部署に配属されても、部署は、状況に応じて変わっていくものです」
 皆、頷きながら話を聞いていた。
 「社会も企業も、常に変化、変化の連続です。
 その時に、自分の希望と違う職場だから仕事についていけないとか、やる気が起こらないというのは、わがままであり、惰弱です。敗北です。
 就職すれば、全く不得意な仕事をしなければならないこともある。いやな上司や先輩がいて、人間関係に悩み抜くこともあるかもしれない。
 しかし、仕事とは挑戦なんです。そう決めて、職場の勝利者をめざして仕事に取り組む時、会社は、自分を鍛え、磨いてくれる、人間修行の場所となります」
 山本伸一の口調は、語るにつれて、厳しさを増していった。
 伸一にとっては、創大生は皆、最愛のわが子である。実社会の試練に、決して負けないでほしかった。そう思うと、自然に、言葉に力がこもるのであった。
 「私は、青年時代に、戸田先生の会社に、少年雑誌の編集者として勤めました。編集長にもなりました。
 ところが、先生の会社は経営不振に陥り、私がやることになったのは、全く畑違いの、 最も苦手な金融の営業でした。
 しかし、どうせ働くならば、その道の第一人者になろうと、毎日、泣くような思いで、懸命に努力しました。苦労の連続でした。
 でも、それによって、戸田先生の事業を再建することができたんです。また、そのなかで、実に多くのことを学びました。それが、私の人生の力となっています。
 会社を、ただ、給料をもらうためだけの場と考えるのは、使用人根性です。その考え方だと、一定の給料であれば、一生懸命に働くことは損だということになる。それでは、結果的に会社の“お荷物”になってしまう。
 君たちには、全員、職場の勝利者になってほしいんです」
 学生の一人が尋ねた。
 「職場の勝利者になるうえで、何を心がけるべきでしょうか」
 伸一は言下に答えた。
 「自分がいる、その場所で信頼を勝ち取ることだ。その部署で、第一人者になることです。
 また、仕事で実績をあげることは当然だが、まず、朝は誰よりも早く出勤し、掃除ぐらいして、元気なあいさつで、皆を迎えることだよ。朝に勝つことだ。
 遅刻なんてもってのほかだし、あいさつができない者は、それだけで社会人失格だ。
 もう一つ大事なことは、どんな立場であれ、自分が会社を担っていくのだという決意で、全体観に立って、仕事をしていくことだ。
 どこにあっても、受け身ではなく、主体者、責任者の自覚をもつ――実は、これが、自分を大成させるかどうかの決め手でもある。
 君たちが、誇り高き、わが創価大学の一期生として身につけてきたものは、まさに、その精神じゃないか」
 山本伸一は、居合わせた三十人ほどの学生一人ひとりに視線を注いだ。
皆、凛々しく、たくましい顔立ちをしていた。
 彼は、微笑を浮かべながら言った。
 「就職に際しては、なんとかなるだろうという甘い考えを捨て、絶対になんとかするのだと決めて、自分の将来の道を切り開いてください。
 就職する会社は小さくとも、あるいは、有名ではなくとも、いいではないか。
 どこであれ、入った会社で、君たちが核となって、後に続く創大生のためにも頑張り抜いてほしい。それが、一期生の責任です。
 よく牧口先生は、こう言われていた。
 『人間には、三種の人間がいる。
 ――“いてもらいたい人”“いてもいなくても、どちらでもよい人”“いては困る人”』
 創大生は、どの職場にあっても、“いてもらいたい人”にならなければいけないよ。
 私も、諸君の未来のために、全力で応援していきます」
 伸一は、その場にいた全員に、「就職の前祝いに」と言って、心ばかりの小遣いを渡した。
 一期生は、創価大学に入学した時から、就職は厳しいものになることは覚悟していた。
 創大生たちは、よくこう語り合ってきた。
 「新設の私立大学で実績がないだけに、一流といわれる企業は、創大生を採用しないと思う。
 でも、ぼくは、山本先生の創立した大学の建設に尽力したくて、創大を選んだ。悔いなどない」
 「そうだよ。どんな仕事をして生きるようになってもよい。覚悟はできている」
 しかし、伸一の励ましを受けた一期生たちは、後輩のために、なんとしても就職の道を開きたいと決意した。それもまた、自分たちに課せられた、パイオニアの戦いであると思った。
 皆、勇んで就職活動に取り組んだ。だが、事前に、その会社について、話を聞くべき卒業生の先輩はいなかった。
 自分で、ここぞと思う会社と連絡を取り、訪問していったのである。
 勇気を振り絞って、自ら戦いを起こす――そのなかでこそ、人間は磨かれ、自身を輝かせていくことができる。
 大手企業は、あらかじめ採用する大学を指定しているのが普通だった。
 創大生が、会社を訪問しても、「おたくは指定校ではありませんので、採用枠がありません」と断られることも少なくなかった。
 しかし、創大生は毅然としていた。
 「わかりました。私は結構です。でも、後輩たちには、平等に採用のチャンスを与えていただけませんでしょうか。
 優秀な後輩たちが続いております。どうか、来年まいります後輩については、よろしくお願いいたします」
 その精神は、二期生にも、三期生にも受け継がれていった。
 こうした創大生の姿は、企業の人事関係者などの心を、強く揺さぶったようだ。重役がその態度に感銘し、創価大学の採用枠を設けた企業もあった。
 どこにあろうが、ダイヤモンドはダイヤモンドである。その輝きは、決して失せることはない。そして、必ずいつか、人の目にとまるものだ。
 ともあれ、一期生は開拓魂を燃え上がらせ、就職活動に果敢に挑んだ。それは、断崖絶壁を素手でよじ登るかのような、厳しい挑戦といえた。
 そして、内定を勝ち取った報告が、次々と就職部に寄せられていったのである。
 新設大学の一期生としては、異例なほど、一流企業への内定が多く、最終的に、就職率は百パーセントを達成した。
 また、この年も、前年に引き続き、公認会計士試験に二人が合格したほか、外務公務員上級試験にも一人が合格し、大きな話題となった。 創大生のなかには、並みいる有名大学の学生とともに採用試験を受け、一番の成績を取り、大学の評価を大きく変えた人もいた。さらに、入社式で新入社員の代表として決意を語った人もいた。
 また、入社後の奮闘ぶりに、上司から、「あなたを見ていると、創価大学の認識を改めなくちゃいけないね」と言われた女子の卒業生もいた。まさに、皆が創立者の自覚で、勇敢に、開拓の道を歩んでいったのである。その姿、その生き方のなかに、創価の人間教育が脈動していた。そこに各企業も、やがて高い評価を寄せるようになっていくのである。


『新・人間革命』創価大学の章

学生ならば

学生ならば、徹して勉強するのです。
わが頭脳を鍛えに鍛え、実力をつけ、偉くなるのです。必ず優等生になると決意するのです。
そして、世界の平和のために戦うのです。
また、お世話になった人に恩を返し、親孝行をするのです。
それを教えていくことが本当の教育です。
教員の皆様も、よろしくお願いします。
他者に深く感謝できる人こそ、本当の人間らしい人間です。


2009.5.18
クイーンズ大学からの名誉博士号授与式での謝辞
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