言葉の力は大きいものだ。それは演説に限らない。小さな集いや、日常の会話であっても同じことであろう。また、話の優劣は、表面的な上手、下手で評価されるものでもない。
 たとえ、話はうまくなくても、多くの人に信頼され、尊敬されているリーダーは、たくさんいる。反対に、いかに弁舌さわやかでも、いつのまにか周囲の信頼を失っていく者もいる。
 要するに、人の胸を打ち、納得させていくのは、言葉に何が込められているかという点にあろう。相手を「思いやる心」と「誠実さ」そして「高き精神」こそ肝要であり、その人格や人間性が明快な論理となって表れて相手の心を動かし、社会を動かしていくのである。
 人は人と人の間に生きる動物であり、その間をつなぐものは言葉である。社会における一言――日常における言葉もまた、リンカーンの演説に勝るとも劣らぬ偉大なスピーチであり、人間覚醒への“演説”となりうることを、私は確信してやまない。


『私の人間学』